Wenkerの調査票の全文とその和訳である。Wenkerの調査した結果については日本の文献でいろいろ触れられることはあったが、原文がどんなものかは案外紹介されていないように思う。実際に本文を入手してみると、いかにも150年前の調査だと思う。馬に乗って移動してあげくのはてに氷を割って水の中に落ちてしまったり、体罰を平気でしたり、子供(たぶん小学生か中学生あたりを想定か)にdu(お前)と呼びかけたりと今とは隔世の感がある。この調査票を使っても調査されたほうは全くぴんとこないのではないか。
ただ、Wenkerのねらいは個々の文の中の語に含まれる母音や子音がどのような音韻変化を遂げているかを知ることにあったので、調査文が逐語訳されていればそれでよかったらしい。たとえば、Das Wort kam ihm vom Herzenという文であれば、このなかの6語すべてが分析対象となる。したがって、たかだか40個の文しかないが、ここに使われた数百の語の音素のそれぞれが言語地図の材料となるのだから、大変である。50000以上の調査票があるので、地図を1枚書くだけで1年かかる。マールブルクの研究所の作業が何十年かかっても終わらないのは当たり前である。
翻訳は大急ぎでしたもので、単なる参考にとどめてほしい。大きな間違いはないと思うが、いくつかの文で全くわけが分からないものがあった。14ではそんなに凶暴なガチョウがいるのか不思議だし、20と40は専門家に聞いたほうがいいのではと思われる。
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息子に例文を見せたら「何でこんな例文なの?!」と爆笑してました。
ワイン一壜ってどんだけ飲むのか。性悪のガチョウは個人的にツボでした。ググってみるとガチョウの口って怖いんですね。例文とは関係ないと思いますけど。
確か北杜夫のエッセイで、ドイツで子供に話しかけたらぽかーんという反応だったので通じてないのかと思ったら”du”でなく”Sie”で話しかけてたせいだった、という話があったのを思い出しました。60年くらい前でそんな反応だったら150年前だと当たり前なんでしょうね。
ドイツ語は(も)全然分からないので個人的にはduと言われてどうなのかもサッパリですが。
ドイツ語は方言差が大きくて同じものを違う名で呼ぶことが多いのですが、質問文は基本的な言葉を使っていてそのへんは注意深く考えられていると思います。でも、あの広かったドイツ帝国のどこでも内容的にあれで通用したんだろうかと。150年前だったらそれでよかったんですかね。