『ドイツ民話集』(補足)

悪い癖で、記事をポストしたあとで説明不足だったり、意を尽くせていなかったことに気づいたりする。
私が取り上げた話が「グリム童話のように整っていない」というのは、こんなことだ。お話の前半は兄弟が家を追い出されるてんまつである。
箒職人の父が森に材料を取りに行くと金色の鳥がいた。鳥は黄金の羽を一枚落としていくが箒職人はそれを拾って金細工師の兄に見せる。金細工師は弟にお金を渡して「今度その鳥をみつけたら、持ってきてくれ。お金はもっと払う。」と言う。次に森に行ったとき箒職人は鳥を撃ち落として兄のところに持っていく。兄は妻に鳥の肝臓を煮るように言うが、鍋が煮えている最中に箒職人の子供二人がやってきて鍋の中身を食べてしまう。それから子供たちは朝起きると枕に1ターレル金貨を見つけるようになる。箒職人は心配して金細工師に相談すると「魔法にかけられているから家から追い出せ」。親に捨てられた子供たちは森番に拾われて成長して…
これがお話の前半なのだが、あとの話と全然つながっていない。兄弟二人で毎朝2ターレル稼ぐのだったら、森番はあっという間に大金持ちになるはずだが、そんなことはあとの方では全く出てこない。金細工師は相当悪者らしいが、後半で活躍するのかと思うとそれもない。もともと別々の話をくっつけたように見える。
グリム童話はこれとは違って隙がない。民話そのものではなくて、グリム兄弟が手を加えて整えたのではないかという気がする。それから、ドイツ人以外も周囲にいるような地域で収集された話が『ドイツ民話集』に多いのは、他民族にルーツを持つ話を当地のドイツ人が取り入れて昔話のレパートリーが増えたからではないかとも思われる。
ドイツ人の居住地が東ヨーロッパの各所にあったのは「東方植民」(Ostsiedlung)による。「北方十字軍」のように血なまぐさいこともあったが、ナチス以前は多民族共生が曲がりなりにも実現していたようだ。むしろ最近のほうが「民族浄化」のようないやな動きが先鋭化しているように見える。

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カテゴリー: 雑文

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