2021年秋のTop500

世界のスパコンランキングが発表になった。日本の富岳が3期(1年半)続けて世界一だった。Green500という省エネ性能のランキングではやはり日本のPFN(AIの新興企業)のMN-3が一位だった。
10年以上前から年に2回発表されるTop500というスパコンのランキングを注意して見るようになった。と言っても、自分でスパコンを動かしてみようと思っているわけではない。私がやっているような作業はグレードが最下級のパソコンでもできるような代物で、強いてスパコンを使わないとできないような課題は持ち合わせていない。「ニッポンスゴイゾ」と自己満足に浸りたいわけでもない。強いて言うなら中学生が「スーパーカーどれが一番速い?」などと自分が乗ることが一生ないような車に夢中になるミーハー的な気持ちに近いと思う。40年間パソコンに触っていてCPUの性能がまさにムーアの法則の通りにものすごい勢いで上がっていくのを見ていた。その延長でスパコンの成長をここ10年以上見守っている。
日本のスパコン界で一二を争う権威と言ったら牧野淳一郎さんだと思うが、この人のブログをときどき見る。牧野さんから見たスパコンの歴史もわかるし、テクニカルな解説は非常に参考になる。悲しいことにテクニカルな話は100分の1も理解出来ていないのだが。
半年前のTop500のあとで牧野さんはうがったことを書いていた。富岳は突出した性能で独走しているが、その力を発揮するには30メガワットの電力を要している。アメリカも中国も富岳を超えるスパコンを出せないのはそれだけの電力を調達できないからではないかと言うのだ。。
一般の家庭の平均的な(ピークでない)電力消費量が1キロワット程度だとすると30メガワットは3万軒の家庭のそれに当たる。今のスパコンは単に規模を大きくすれば性能が上がるので第二位のアメリカのSummitも規模を何倍かにすれば富岳を超えただろう。しかし、そのためには電力を調達しなければならない。スパコンは巨大化したあげくの果てに電力がネックになるところまで来てしまった。
富岳がトップを維持したのはスパコンとしての性能よりは電力を確保できたためだったというのはある意味で衝撃的な話である。牧野さんの推測に過ぎないのだが、当たらずと言えども遠からずかもしれない。
そして今回も衝撃的な報告があった。中国が富岳をはるかに超えるコンピューターを作ったらしい。中国は今回ランキングに参加していないので正式な数字は出ていないのだが、秋のTop500のときにゴードンベル賞というスパコンを使った研究に与えられる賞があり、その賞を中国が獲った。受賞理由を説明するなかでスペックを推測させる情報が出たらしく、それによれば演算性能は富岳の3倍、電力効率が2倍というすさまじいものだったらしい。
アメリカのトランプ前大統領は中国のスパコンに脅威を感じて、アメリカ製のスパコン用CPUを中国に対して禁輸した。ところが、中国は独自設計の中国製CPUを使って上記の性能のスパコンを作ってしまった。トランプは禁輸して中国を困らせるつもりだったが、中国にとっては新たな刺激になって逆効果だったことになる。
今回のTop500は富岳が3期目の一位ということで飽きがきたのかマスコミはあまりとりあげなかったようだった。記事になったのを見るといつもの調子で「ニッポンスゴイゾ」だが、「実質2位だった」という話こそ記事にしてほしかった。

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