「言語地理学」のカテゴリーの記事「言語地図と現代史」で「国研が所蔵している世界の言語地図を研究費をいただいて調べている」と書いたが、これは「共同利用型研究」の公募に応じて採択されたものだ。
1年計画だったが、コロナで研究所に行く機会が制限されてしまい、7回調査に行く予定が1回しか行けず、1年延長したのだった。結局おまけの1年の間に2回しか機会がなくて、中途半端な形で終結させるしかなかった。
私の研究題目は「国研の蔵書から見た海外言語地理学・言語地図の歴史と現状」で、他にも何人かの方がそれぞれのテーマで「共同利用型研究」(国研内のデータや資料を使ってする研究)に参加されている。
私の研究は国研の大西教授の研究プロジェクト「空間接続」の一部として引き継がれることになり、これからも続ける予定である。「空間接続」に関わる研究者は全部で20名あまり、日本だけでなく、中国、韓国、台湾、フランスからも参加(アジアの研究者の多くは日本に居住している)している。4月から毎月ズームによる定例の会議が行われていて、6月には私が自分の「共同利用型研究」について発表した。
コロナ以前には考えられなかったことだが、リモート会議なので全員がばらばらの場所から会議に加わることができる。会議をするのに旅費の手当をしたり、出張手続きをしたりする必要がない。フランスにいる人が当たり前に会議に参加できるのだから、これは決して悪いことではない。
国研の所蔵している言語地図のリストを作るのにatlasというキーワードでヒットしたものを使っていたのだが、ロマンス語の専門家からは「イタリア語ではatlasではなく、atlanteと言う。こちらで検索したら沢木のリストにない言語地図が3件見つかった」という指摘があった。
現在、全国の図書館、大学や研究機関で使っている検索システムはOPACというものだが、国研はもともと紙のカードで蔵書を登録していた。OPACに移行するときに大量のデータを入力(遡及入力)することになってキーワードも一緒に登録したのだが、言語地図がすべてatlasというキーワードを付加されたわけではなかったらしい。イタリア語の言語地図がatlasでヒットしなかったのはもう一つ理由があって、フランス語でもスペイン語でも「地図集」はatlasなのだが、イタリア語だけそうでない。イタリア語以外ならば題名のなかにatlasが入っていれば、キーワードにatlasがなくても題名でヒットするのだが、イタリア語の言語地図は題名にatlasが入らないのでキーワードにatlasが入っていないと全くヒットしないということになる。
イタリア語に限らず、検索語としてのatlasは万能ではないので、最後は書庫に入って調査をしないと完全なリストは作れないことがわかった。
フランスのフィリップさん(Philippe del Giudiceさん、ニース大学)からは私のリストにないフランスの言語地図のことを御教示いただき、会議のあとでいろいろな言語地図の電子データをいただいた。なかでも圧巻はジリエロンのフランス言語地図(ALF)のPDFを見られるサイトのurlである。図書館に行かなくてもALFの個々の地図が見られる。
国研では「共同利用セミナー」として9月12日に「共同利用型研究」の発表会(リモート)が行われる。
プログラムはこちら。
私もそのなかで発表させていただくことになった。興味のある人は事前に登録をして見に来てください。