徳之島は動物の密度が高い。小動物であれ、鳥であれ日々間近に目にする。一年を通して気温が高く、雨が多いからだろう。
動物の密度の高さを一番最初に実感したのは、プチ移住2日目ぐらいにAコープのある平土野目指して歩いているときだった。
梅雨入りしたばかりで、空を厚い雲が黒く覆い、雨も間断なく降ってくる。夕方まで時間があるのに薄暗い。車は通るが道を歩く人は誰もいない。舗装された歩道をとぼとぼと歩いていると足下でぐしゃぐしゃと音がする。
見てみると直径1センチもないようなカタツムリがうじゃうじゃいる。舗装に生えている苔や藻が雨で軟らかくなっているのを食べに来ているのだ。松本のマンションでも雨の日にコンクリ製のレンガを敷き詰めてある歩道にカタツムリが出てくる。でも、密度が全く違う。島は土壌が石灰岩をベースにしているせいで植物のカルシウム含有量が多いのではないかと思う。そのせいでカタツムリがこんなに多いのか。
借りている家には芝生があるのだが、そこを歩いていてもぼろぼろとカタツムリの殻が割れる音がする。草に隠れて見えないがカタツムリの殻がいたるところに転がっているらしい。
この家はヤモリが多かった。ヤモリは夜になると天井のどこかでチーチーと鳴く。足に吸盤があるので、天井に張り付いても落ちない。でも、ときどき天井から落ちてくる。熟睡中に私の顔に落ちてきたときはさすがにびっくりして目を覚ましたが、これは張り付きに失敗したからではない。ヤモリは体重が非常に軽くて、体も柔らかいので天井ぐらいなら落ちたときの衝撃はたいして大きくないはずだ。ヤモリは垂直移動ぐらいのつもりだったのではないか。簡単に移動するための手段として天井から落ちたのだろう。
朝になると、畳のそこかしこにヤモリの糞が落ちている。これを拾うのが毎朝の仕事だったが、家の中を動き回っているのは成体のヤモリだけではない。1センチに満たないようなこどものヤモリが深夜私の机の上を歩き回る。こんなヤモリは当然のことながらホコリのような糞をする。それに気がついたあとは朝一番にほうきで畳を掃くのが決まりになった。
家を借りるとき、黒いシミのようなものが畳についていた。案内してくれた家主の方はそれを見て、「モグラが出るんですよ」と言った。この島で「モグラ」と言うのはジャコウネズミのことで、島の人は本土のモグラと違うことは承知でこれをモグラと言う。
夜中に台所を走っているのを一度だけ見たことがある。ネズミと違って紫がかった灰色の体色だった。道ばたに死骸が転がっているのも見た。それだけかと思っていたら、なんとゴキブリホイホイに足をとられて動けなくなっているのを発見した。ゴミ袋に入れて捨てたがさすがにいやな感じだった。
道ばたにはよく蛇の死骸が落ちていた。車にひかれたのだろうか。隣の家の人がアオダイショウを捕まえたのを見たこともある。野生のハブは見たことがないが、島にいるあいだにいろいろな種類の蛇を見た。
トカゲも見た。本土のトカゲやカナヘビより2回りも3回りも大きい。べつに怖くはないが、日陰の道を悠然と歩いているのを見るとしゃがみ込んで観察したくなる。トカゲも急に逃げたりはしない。しばらくにらめっこをしていると向こうが先に飽きたのかすたすたと行ってしまう。
「命あふれる徳之島」という徳之島の博物誌の本がある。まったくその題名の通りだった。
ヤモリ…台湾を思い出します。友人宅で壁や天井に張り付いているのを見て私はビックリました!が、普通のことだそうで、それにも驚きました。寝ている時に顔に落ちてくるのは体験しませんでした。よかったです(笑)!
昔々新婚旅行でバリ島に行ったときにホテルのテラスの天井に巨大なヤモリが張り付いているのを見ました。徳之島の2倍はあったと思います。プチ移住時はヤモリが一番の友達だったような。