TOP500

今年もTOP500が発表された。これは世界のスーパーコンピューターのランキングで、実はここ15年ほど年2回の発表を楽しみにしているのだ。TOP500はサイト名でもあって、ランキングはここで発表される。
今回は理研の富岳が3期連続の首位だったが、日本が一位になるのを見るのがうれしくてウォッチし続けているのではない。コンピューター技術の最先端の移り変わりが見られるのと、国ごとの力の入れ方が分かるのが面白いのだ。技術ということで言えば、最近はnVidiaのグラフィックプロセッサーを使ったものや、インテルと同じ命令体系のCPUであるAMDのEPYCが躍進しているし、富岳のようにARMのCPUを使ったものも増えてきた。国別で言うと中国の躍進はよく知られているが、サウジアラビアがいつのまにか上位10位以内に入るスパコンを持つようになっているし、台湾や韓国もかなり高性能のスパコンを持っている。今回は突然ルクセンブルクがランキングに入ってきたのが印象的だった。それも37位だ。自国でスパコンを運用できることが国の技術力の源泉になることが広く理解されてきたのだと思う。
スパコンのハードウェアについては下記の牧野淳一郎さんのサイトが参考になる。
http://jun-makino.sakura.ne.jp/articles/future_sc/face.html#TOC
と言ってもここにはスパコンのプログラムを書く人でないと分からないようなことが書いてある。「参考にする」というよりは分かったふりをして読んでいるだけなのだが。
中国やアメリカがスパコンに力を入れるのは核開発に使うからだとよく言われる。実際にはそれ以外にも使われていて、スパコンのプログラムが書ける研究者や技術者も多い。それは両国が上位500位に入るスパコンを100台以上も持っていることからも分かる。
翻って日本はどうなのだろうか。上位500位のスパコンを持っているのは東大を始めとする旧帝大のほかは限られた国立大と国立の研究所だけである。スパコン技術は限られた人材だけのものになっているのではないかと危惧する。ハードは数値を見て順位をつけることが可能だが、ソフトの開発力は簡単には数値化できない。今の日本のソフト力は世界のトップに君臨するものではないことが推察できる。最先端のレベルはかなりのものだろうが、人材の厚みが足りないのではないか。
一方で専門家以外の資金力もない人間がスパコンを使うことの敷居は昔に比べればずっと低い。40年前の世界一のスパコンの性能は我々が普通に使っているPCより低いぐらいではないか。少なくともメモリーに関してはそうである。スパコンの性能向上のスピードはとても速くて、ちょっと性能のよいPCに演算用のグラフィックボードを付ければ10年前だったらスパコンでございと威張れるぐらいの性能になる。また、今回のtop500にマイクロソフトとアマゾンのクラウドサービス用のスパコンが29位と40位につけていることから分かるようにクラウドでスパコンを使う環境もできている(アマゾンのクラウドは独自CPUを使っているらしい)。このサイトで使っているプロバイダーも「高火力」と称して高性能の演算用グラフィックボードをつけたPCを月ぎめでレンタルしたり、時間貸ししたりするサービスを行っている。
せっかくこんなにすごい能力のあるコンピューターを使う機会が目の前にあるのだから、一度いじってみたいと思うのだが、残念なことに方言研究に関わることで使うメリットがありそうなものがない。今のPCは本当に素晴らしい。10万要素ぐらいのソート(並べ替え)でも瞬時にできてしまう。文字列処理ではソートが一番使いでがあるのだが、昔のPCではこんなに大規模なデータをいっぺんに処理することはできなかった。それでも工夫すればなんとかソートはできた。今のPCがあればなおさらスパコンの出番はない。
AIはスパコンあるいは「高火力」のPCでなければできないが、方言研究でAIができることは何だろうか。ずっと考えているのだが、それが分からない。また、一般的にはAIには大量のテキストデータが必要だ。そんなものは今の日本の方言研究には存在しない。
というわけで、自分ではプレーしないサッカーファンがJリーグの順位表を見るのに近い気持ちでTOP500を見ることになる。

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