徳之島に着いた翌日、仮の我が家となった家から海の近くまでを歩いた。もう徳之島には通算で100日以上来ているはずなのに、ぼんやり歩いていると新しい発見がある。
今回の発見は家の造りだった。徳之島の家は沖縄の宮古の家とは異なり、本土の家と似ている造りが多い。そういう印象を与えるのは黒い三州瓦を載せている屋根が多いせいなのだが、よくよく見るとやはり違う。一般的に言えるのは、全体を低く作っている家がほとんどだということだ。二階建てにすることはできるだけ避けているように見える。言うまでもなく台風に対する備えだ。
私が借りることになった家はこの島の一般的な造りで、トタンぶきで上から見ると正方形になっている。あとでこの正方形の角にもう一つ小さな正方形を継ぎ足して増築した形跡がある。屋根はまっすぐ鴨居の高さまで延ばしてある。本来の屋根の先にトタンを継ぎ足したようになっていて、独立したひさしはない。中から外を見ると、ひさしが深く作ってあるように見える。夏の暑い日差しを家の中に入れない工夫だ。
ところが、台風のときには屋根にトタンを継ぎ足したその先端から雨が回り込んで天井の裏に入り雨漏りを起こすことがある。長い長い距離を雨粒が逆流してこんな被害になるには猛烈な風が長時間続く必要があるが、実際にそれは起き、滞在中二回経験した。
トタン屋根は軽いので建物の柱を簡単にできる効果がある。また、瓦のように一部が風で飛んだりすることはない。逆に軽いために屋根がそっくり抜けてどこかに飛んでしまうことはある。40年前方言調査をしたとき、台風の直後だったが、たまたま訪れた家は屋根がまったくなく、ご夫婦が濡れた布団を干していた。大変な状況だったにもかかわらず、調査に応じていただきとても親切にしていただいた。嘘のようだが本当の話だ。