久しぶりに大学病院に行った。3ヶ月に一度アレルギーの薬をもらいに行くだけのことでもう13年続いている。
診察を受けているあいだ診察室に何気なく置いてあった特別病室のパンフレットが目に入った。特別料金の個室病室だ。D-ROOMという名前で1泊50600円と27500円の二つのタイプがある。
今まで見たことがないような施設だが、察するに赤字対策だろう。大学病院は軒並み赤字で信州大学もご多聞にもれない。信大病院は今まで収益を上げて大学全体の会計を助けてきたのだが、働き方改革と物価高騰の影響で赤字に転落した。普通に診療活動をした結果としての黒字を続けていたのだが、それだけでは立ちゆかなくなった。
国立大学は国立大学法人に移行して久しいが、独立採算である以上何らかの経営努力をしなければならない。少し前には全国チェーンの調剤薬局を病院のビルに誘致した。病院を出てすぐのところに薬局があるのだから通院患者には便利だ。病院にとってはテナント料が収入になる。ただ今まで患者の多くが利用してきた大学の隣の薬局は閑古鳥が鳴くようになった。私は待たずに薬が出るようになったその薬局に以前と変わらずに行っているのだが。
特別料金の個室の話に戻るが、仮にすべてのD-ROOMが埋まる状況になっても億単位の赤字が解消できるわけではない。小さな努力を積み重ねて赤字を少しでも減らそうということだ。
でも、大学病院が軒並み赤字だと伝えられているのは今の医療制度にも問題がある。聞くところによれば健康保険が事実上存在しないアメリカでも、健康保険があるイギリスでも医者にかかるのは大変なことらしい。アメリカでは交通事故にあったり、病気にかかったりして病院に入るととんでもない出費になると言うし、イギリスでは健康保険で診てもらおうとすると待ち時間が大変なことになると言う。現代の医療はもともと高価なものだが、日本の国民健康保険の受益者からはそれが見えにくくなっている。
では国民の負担が少ない日本の医療行政が素晴らしいかと言うとそうではない。国民が少なく払っている分、財政には大きな負荷がかかっている。このままでは立ちゆかないから国民の負担を増やす方向にしなければならないと素人目にも分かるのだが、既成政党は選挙が怖いからドラスティックに負担を増やすようなことは絶対に言わない。維新は小手先の改革を主張しているがそれだけでは足りない。支出のなかで医療費が大きな割合を占めている国家予算はおかしい。
医療制度を根本的に変えないと大学病院の苦境は続く。後期高齢者で安くなった薬代を見ながらそんなことを思った。
実は以上の文章は3ヶ月前に書いたものだった。ブログとして出すのはちょっと躊躇していたのだが、今の総選挙の様を見ていると黙ってはいられない気がしてきた。
このまま行ったら(今の状態でも?)国家予算はパンクしてしまうのだが、どの政党もまともに取り上げていない。それと米が高すぎる問題はみんな忘れてしまったのだろうか。
医療費は医師会が、米価はJAが強力な圧力団体になっている。おそらくは圧力団体を恐れてはっきりしたことを言えないのだろうと思う。「日本人ファースト」を唱える政党は分かりやすい敵を作ることで自分たちの味方を増やすという戦略を取っているらしい。もっと大きい問題から目をそらすという効果もある。
物価高対策でお金を配ったり減税をしたりするのは筋が通らないことで、米価を下げるほうが対策になっているはずなのだがどうしてみんな忘れてしまったのだろう。